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まちでであった芸術。そのしごと、しごと場。
by gei-shigoto
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樹の会 合唱劇「二つの愛の物語」

 831日(土)、渋谷区文化総合センター大和田さくらホール。樹の会合唱音楽の夕べvol.7 新実徳英の合唱世界Ⅱ「二つの愛の物語」(指揮:藤井宏樹)。

 

  新実徳英作曲:混声合唱曲集「三つの愛の歌」

   ピアノ:浅井道子 

  新実徳英作曲:合唱劇「二つの愛の物語――伊勢物語より あずさ弓・筒井づつ」

   台本:和合亮一 演出:しままなぶ チェロ:ヨコミゾ ヒロユキ

   クラリネット:加藤亜希子 

   「あずさ弓」男役:金沢青児 女役:荻原美城

   「筒井づつ」男役:中村響 女役:塙亜寿美

 

 平安初期に成立した歌物語、『伊勢物語』。さまざまな人間模様を映した全125段の物語の中から、愛の切なさ、強さを描いた「梓弓(あずさゆみ)」「筒井筒(つついづつ)」が取り上げられた。

 

〔あずさ弓〕

 都へ行き、3年もの間一切音沙汰のない夫。やがて淋しい妻に心を寄せる誠実な男が現れ、その男に添うと決心したまさにその日、夫が戻ってきて戸をたたく。わけを話すと、夫はその男と仲睦まじく暮らせと言い残して去ってしまう。妻は夫を追うが、追いつけず、こと切れてしまう。

 

〔筒井づつ〕

 幼馴染の二人は結婚するが、やがて夫の浮気が始まり、夫は山を越えて出かけるようになる。喜んで送り出してくれる妻。もしや妻も浮気を…?と疑った夫が出かけたふりをして庭に隠れていると、妻は化粧をし、歌を詠む。それは夫の旅を案じる歌だった。夫は妻の愛に心を打たれ、その後は出かけるのをやめた。

 

合唱劇は初めてだった。事前に、原文を読んでいたのだが、どうにも想像のつかないことがあった。

合唱は、物語に何を加えるのだろうか。この素朴な短い筋に、どう関わろうというのか。

そして、合唱団員の人数の多さは、男女2人の世界に合うだろうか。この何とも寂しさの漂う世界に。

この劇、主役は独唱の男女である。切々と、また雄弁に朗唱し、話を強く進めていく。

この劇の合唱。彼らは、何よりもこの2人の情念の位置に立った。それを、真摯に増幅させていく。背後で情景描写を担当するという立ち位置ではなく、男と女ののたうつ届かぬ想いを、正面から引き取り、各人それぞれの位置取りによって、身体によって、そして何よりも声によって、舞台空間を圧倒的に満たした。

あの何とも言えぬ侘しさの漂う、古代大和の草むら。山際の月の薄明かり。ひそやかな男女の交渉は、そこに名もなく埋もれてしまってもおかしくないものだったろう。

合唱劇は、そこに手を差し伸べた。現代の舞台上に引き上げて組み直し、一つの普遍的な愛の世界とつないでみせた。


by gei-shigoto | 2019-09-01 13:43 | その他
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