高校のときに歌った曲。作詞は、伊藤海彦。
季節を主題にした合唱曲は少なくない。この曲の鮮やかさは、どうだろう。彩色の確かさ。
「1.ひらく」 春である。アルペジオが聞こえる。ずっと遠くのほうから風。風の匂いがする。身を任せている。自分も透き通っていく。眼が開かれる。
「2.のびる」 夏。夏の真っ直ぐなたくさましさ。樹液を吸い上げる。どこまで伸びゆくのか、夏は限度を知らない。
「3.みのる」 秋。垂れ下がった房の輝き。思いがけない深み。旅は終わった。到達したのである。人の心にも、見えない実り。
「4.ゆめみる」 しかし、ここまでではなかった。一つ行き過ぎるのだ。冷え冷えとした雨。月は冷え、すべては押し黙ってしまう。人はどうだろう。人はこもる。内側を見つめる。
ひえびえと雨がすぎれば
枯葉つもる 道は昏く
ただ 冬鳥の きしむはばたき
ふかまる夜に
月は冷え
枝先に
からからと鳴る 乾いたかずら
みえないことで みえてくる世界
夢みるために
みえないでいる世界
ひとはこもり ひとり夢みる
栗鼠のように
蛙のように
時を孕んだ 石のように
歌をとざした 氷のように
ひとは夢みる 手をかざし
炎のなかに 土の器を
やがてくる 雪の白さが
悲哀を讃歌に変えるまで