水口克夫(みずぐち・かつお、1964~)は、日本のアートディレクターである。電通入社後、アートディレクターとしてさまざまな分野のプロジェクトにたずさわったのち、2003年にシンガタ設立に参加。2012年には独立してホッチキスを設立。NEC「バザールでござーる」シリーズやJR東日本「北陸新幹線開業キャンペーン」、サントリー「ボス」「響」、全日空、明光義塾など数多くのヒット広告の制作やブランディングを手がけている。
うまく文章が書けないのは、文章力がないからではなく、訴えたいことが明確になっていないからだ、という話を編集者に聞いたことがある。アートディレクションもそこは同じだ。
「捨てる。」で説明したように、デザインを考えるときには、まず情報を整理して絞り込み、伝えるべきものをきちんと把握することが大切なのはまちがいない。
ただ、すでにある情報を「絵に落とし込もう」「うまくレイアウトしよう」とだけ考えはじめると、その表現は急に説得力を失う。情報以前のところにある「訴えるべきこと」、つまりメッセージが置き去りになってしまうからだ。
アートディレクションの基本は「絵で話す」ことだ。そして、「うまく話す」ためには、情報としてではなく、あくまでメッセージとして、「どんなことを訴えたいのか」が明確に意識できていなくてはいけない。
*水口克夫著『アートディレクションの「型」。 デザインを伝わるものにする30のルール』、誠文堂新光社、2015年。