三宅一生(みやけ・いっせい、1938~)は、日本のファッションデザイナーである。1970年三宅デザイン事務所設立。1973年よりパリコレクション参加。衣服デザイナーとして、活動の当初から“一枚の布”を基本理念に据えて、立体としての身体と平面である布との関係を問い続けてきた。1993年に機能と汎用性を兼ね備えた現代生活のための服「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」をスタート。1998年からは藤原大はじめ新チームと共に一体成型によるものづくりである「A-POC(A Piece of Cloth)」に取り組むなど、つねに次のしごとを進行させている。現在は、21世紀の課題に応えたいとReality Labとともにリサーチを続けている。
ぼくにとってデザインがおもしろいのは、すぐに受けいれられるものではない、ということがあります。
向こうにぜったい届けたい人はいるのだけれども、すぐに届くのではなく、少しずつ理解しはじめてくれるもの、というところです。
最初は抵抗がある人もいる。
それがデザインという、人とコミュニケーションをする仕事のおもしろさだと、ずっと思っています。
おもしろい仕事をしたかったら、そこのところがわかっているといい、と思う。
*重延浩聞き手・編『三宅一生 未来のデザインを語る』、岩波書店、2013年。
〔感想〕
著名なデザイナーである。以前、三宅一生に密着した番組を観た。デザインの現場が映し出されていた。ディティールへのこだわりと、それを忘れたかのような大らかに楽しむ姿勢が印象的だった。
短いが、味わい深い文章である。これだけ有名なデザイナーなのに、すぐには受け入れられない。抵抗がある人もいる。少しずつ少しずつ届くのである。それが、人とコミュニケーションする仕事のおもしろさなのだ。
留学生教育の現場でも、同じことが言えるだろう。教師は、すぐに届くコミュニケーションに重点を置く。これは初級では当然だ。
しかし、中級ともなれば、それだけでは窮屈だろう。そこで、「少しずつ届く」コミュニケーションを混ぜるのである。
学生と分かりあうことは、深いことだ。卒業式の日に感謝されたらうれしい。しかし、10年後に感謝される教師になりたいとも思う。