自分を賭けることで力が出てくるんで、
能力の限界を考えていたら何もできやしないよ。
自分という人間をその瞬間瞬間にぶつけていく。
そしてしょっちゅう新しく生まれ変わっていく、
エネルギーを燃やせば燃やすほど、
ぜんぜん別な世界観が出来てくる。
感性をみがくという言葉はおかしいと思うんだ。
感性というのは、誰にでも、瞬間にわき起こるものだ。
感性だけ鋭くして、みがきたいと思ってもだめだね。
自分自身をいろいろな条件にぶっつけることによって、
はじめて自分全体のなかに燃えあがり、広がるものが感性だよ。
人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。
ぼくは逆に、積みへらすべきだと思う。
財産も知識も、蓄えれば蓄えるほど、かえって人間は自在さを失ってしまう。
今までの自分なんか、蹴トバシてやる。
そのつもりで、ちょうどいい。
いちばん大切なのは、自分自身にうち勝って、
自分の生きがいを貫くこと、
これがいちばん美しい。
人生で本筋を通そうとすればするほど、どうしたって一般の常識とは対立するんだ。このときデリカシーをもって、その対立を逆に生かしていけば、お互いが生きてくるんだよ。
会ったことがない人、あるいは一生会う機会がないような人とも、自分の作品や発言を通してコミュニケーションしていくことなんだ。そこにぼくは生きがいを感じる。
*岡本太郎著『強く生きる言葉』、イーストプレス、2003年。