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雪舟筆「秋冬山水図」 東アジアの山水画の中で
雪舟(1420~1506)。「秋冬山水図」「山水長巻」「慧可断臂図」などで知られる画僧。中国と日本、京と地方を遍歴し、日本的水墨画を作り上げた。日本美術史において、最初に個人名で語られる画家だという。
雪舟の作品を、留学生に紹介するときにはどんな言葉が適切だろうか。 今までに、いろいろなクラスで「秋冬山水図〈冬景〉」を見せた。風景画を超越した水墨表現で、日本の山水画の極致とされる。 その時、横に北宋の代表的画家・郭熙(かくき)の「早春図」(1072)を置いた。水墨山水画の頂点に立つ逸品だ。東アジアの山水画の流れの中で、雪舟の独自性を感じたいからだ。 調べてみたら、どちらの作品の説明にも「気」という字が出てきた。 「早春図」の中央には、山がそびえ立っている。しかしこの山は現実のものとは思えない。島尾新によれば、この昇ってゆく龍のような山のイメージには、「気」という中国の伝統的な考え方が関係している。 気は目には見えないが、この世界にあるすべてのものに宿り、それらに特定 の形を与える、いわば万物の根元をなすエネルギーである。そして、山脈は そのエネルギーの通路と考えられていた。山は気に満ちた場所だったのだ (島尾新著『美術館へ行こう 水墨画と語らう』、新潮社、1997年)。 他の文明圏では宗教や哲学において表現されてきた思想や概念を、中国では山水画芸術が表現していたという(マイケル・サリヴァン著『中国山水画の誕生』、青土社、1995年)。 一方、雪舟の「秋冬山水図〈冬景〉」。楼閣へ向かう旅人の頭上に崖がある。その崖の垂直線の厳しさ。 ことに冬景の真ん中あたりに垂直にのびた線は、見る者を粛然たる気持ちに させる。しかも、断崖を描いているはずの線なのに、上方で天に消えゆくよ うに途切れてしまっている。一方、手前を見れば、岩の横に黒々と塗られた 墨。これは全体のバランスを考慮したものらしい。つまり、何を描いたかで はなく、線と形による構成力で人の心をとらえようとした作品であり、その 意味では抽象画の領域に近づいているといえよう(『週刊日本の美をめぐる 水墨画の巨人 雪舟』、小学館、2002年)。 前田恭二は、雪舟はこの垂直線をまず引いたと考えている(『やさしく読み解く日本絵画 雪舟から広重まで』、新潮社、2003年)。その線を生かして絵をまとめあげるべく、左に遠山を描き加えたのだという。「一筆がつぎの一筆を呼ぶといったふうな気合いのとり方」(大西廣)が見てとれるのだ。 郭熙の「早春図」と、雪舟の「秋冬山水図」。 自然に宿る万物の根元をなすエネルギーと、それに対峙する人間の気迫、と言ったらよいだろうか。
by gei-shigoto
| 2010-04-05 21:39
| 美術
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