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まちでであった芸術。そのしごと、しごと場。
by gei-shigoto
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柳井嗣雄展「paper works」

15(月)、コート・ギャラリー国立(http://www.courtgallery-k.com/)。柳井嗣雄(やない・つぐお)展「paper works」。
1953年、山口県生まれ。78年より2年間、フランスに留学。帰国後、版画制作に取り組む。86年より、紙素材を扱う。海外展出展多数。女子美術大学講師。国立市在住。

『表皮』
ギャラリーの奥に居並ぶ、12の幹。丈は、1メートル80ほど。表と裏の境界という意味合いの込められた作品である。
和紙は木の皮を煮込み漉きこんで作る(洋紙は、木の幹)。煮込むとき、薬剤を入れて不純物を溶かし、繊維だけを取り出す。普通は、楮・三椏・麻など、決まったものしか漉かないのだが、本当は何の皮でもよくて、竹でもできるのである。
素材は、杉の皮で、染料は一切使っていない。繊維は、叩けば短くなる。普通は6~12ミリにする。それを長いままにして、荒々しい表情を出している。表情が、それぞれ微妙に異なっているのは、漉く方向や、乾燥のさせ方の違いによる。縦目をわざと出している。
単なる「皮」である。しかも、外周の半分だけだ。身の丈ぐらいなのだ。しかし、見事な体躯である。杉木立を感じる。ぎゅっと集められているためか。表情の険しさのためか。「皮」だけなのに、こちらを凌駕するものがある。それが面白い。

『ニューロン』
30センチ四方の木型ですくい取った、荒々しい8つの繊維の塊。素材は麻である。
繊維はあまり叩いていない。和紙は、水を制御しながら作っていく。その水の流れ、勢いを、そのまま反映させた。
今はガスを使った乾燥機で干すことが多い。この繊維は、昔の農家のように天日で乾燥させてある。干した時間の長短によって、色合いに微妙な差が生じている。
繊維は、物質感を出すために、蠟で固めてある。蠟を使ったのは、繊維の中に均一にしみ込みやすいからだ。紙職人は使わない素材だという。
はがきで見た写真よりも、繊維が身構えている。激情を持って。抑え込もうとする枠と、渦巻こうとする麻なのだ。正方形がもっと広ければ、麻の渦巻きが開放されてしまうだろう。麻は自由だ。狭ければ、感情は穏やかになろう。この枠が、最もせめぎ合うようだ。

柳井さんは、都内で唯一の伝統的な手漉き和紙「軍道紙(ぐんどうし)」(都無形文化財)の継承に関わって来られた。現代の作家として、素材それぞれの抵抗を、職人とはまた違った意味で受け止めてこられたのだろう。『ニューロン』を見ているとき、麻が持っている特別な意味合いについて話してくださった。例えば、しめ縄である。
しかし、前に立ったときには、別のものが引くように思う。一つの視覚的なまとまりを実現しているセンスというか。視野にしっかり組み合ってくる。それがほぼ無意識に生まれていることが、素人にも分かる。民俗芸能も、時折このような凄味を見せることがある。
「職人の受ける仕事は受けない。」職人に持ち込まれるが、職人は受けない仕事。その言葉が、作品にじかに表れていると思った。
by gei-shigoto | 2008-12-17 06:03 | 美術
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